音のない世界

わたし、倉又 司（くらまた つかさ）は生まれつき聞こえない。

親はそれを聞いて絶望したらしい。

昔は、口話法で育てるのが当たり前だった。
※口話法とは補聴器を使って、相手の唇の形や動きを見て話す内容を理解し、
同時に自ら喋ることができるような発声訓練を行うこと。

聞こえないので周囲の会話やテレビがわからない。

日本語が理解できないので本さえ読めない。

ずっと天井を見ている子だったと親は言う。

中学入学前に長岡市にある聾学校という場所を知り、

手話や本当の友達に触れ、その経験は人生を豊かにした。

今でも当時の友人たちとは強い繋がりがある。

聾学校卒業後、小千谷市の企業に就職するが、

聴覚障害者が社会に出て働くことは予想以上に厳しかった。

口話ができれば良いわけではない。

日本語が完璧でも。

必要なのは「総合力、生きる力」を育てることが大事だ！と気づき、

長岡市の聾学校の寄宿舎指導員として働くことに。

少しでも子供たちが社会に出て困らないように頑張って支援していくぞ！と決めた。

と、思っていたが、卒業後の子供達から聞く言葉は、

「仕事うまく行かない」「我慢。給料いいし、仕方ない。」 だった。

そして、「前職は嫌だったけど、思い切って移住したら楽しい！」 と、

卒業後、長岡市に残るこどもたちはほぼ居なかった。

長岡市は聞こえない聞こえづらい人にとっては暮らしにくい街なのか？ 

私にできることは何なのか？ 

と、自問自答する毎日だった。

「聞こえる」ことが大前提で成り立っている社会なのだなと気づかされた。

せっかく聴覚障害を持って生まれたのだから、

それを活かして同じ仲間たちが幸せに暮せるようにしたい！

自分の子供たちが成長するまでに少しでも暮らしやすい街にしたい！

ネガティブとして捉えるのではなく、自分にしかできないことがある！ 

そう思い、自分で何かはじめたい！と

長岡市にある企業支援センター「clip」主催の起業スクールを受講した。

だれもが「のびのび」できる場所

受講したスクールの中で、「サードプレイス」「コミュニティカフェ」という言葉を知る。

「これだ！」と思い、

私のような聞こえない聞こえづらい人が

「いつでも」「そこで」「ゆっくり」「のびのび」できる居場所を作ろう！

そこに行けば楽しく手話で話せる、

障害のことを気にしなくていい、

美味しいものがいつでも飲める食べられる、

カフェでの交流や繋がりを通して新しい可能性を生み出せる、そんなカフェにしたいと。

これまで、「のびのびカフェ」としてイベント出店や

手話でコーヒーセミナーなどを行ってきていましたが、

今回、素敵なご縁がありbySUZUKICOFFEEとして実店舗をオープンすることとなりました。

音を必要としない。

必要なのは心と一杯のコーヒー。

みんながつながり“のびのび”できるそんな優しい空間と時間。

NOBIbySUZUKICOFFEEはそんなあたたかなカフェを目指していきます。

2024年5月15日（水）のグランドオープン、みなさまとお会いできることを楽しみにしています。

■NOBI by SUZUKI COFFEE

2024年5月15日（水）10時グランドオープン
店舗住所：新潟県長岡市三和３丁目８-２１（鈴木コーヒー長岡支店内）
営業時間：10時～18時（L.O:17時30分)　
※5月中は11時開店、5月15日（水）のみ10時オープン
定休日　：毎週水曜日、他不定休
※5月18日（土）はメンテナンスのためお休み

最新情報はNOBI by SUZUKI COFFEEのinstagramをご覧ください。